しばらく前にシフトレンズを手に入れており、
珍しいので紹介したくなりました。
[PENTAX K-5 & D FA Macro 100mmF2.8]
レンズ自体は28mm/F3.5 で非常にシャープネスの高いしっかりした描写をします。
35mm フィルム用ですがAPS-C でもなんとか建築物にも対応出来る画角となります。
クラシカルなデザインが美しい。少し大きくて重量もあります。
シフトレンズは建築物撮影で正しく垂直を出すために用いられます。
例えば普通のレンズで2階建ての家を撮影する場合、
家の壁に対してきっちり平行に(=地面に対して垂直に)構えることで歪みなく撮影出来ます。
ところがこの方法で2階部分が入らない場合レンズをやや上に向けて撮影することになります。
すると2階部分がすぼまって写ってしまい、これが歪みになります。
歪んだ写真はむしろ一般的なので見慣れた写りかたになりますが
ひとたび垂直を意識しだすととても気持ち悪く感じるようになります。
上がすぼまるというのはどういうことなのでしょうか。
動作としては手元でカメラを上に少し傾けるだけなのですが
結果として2階部分がずっと遠いところに位置してしまうことになり小さく写る、
ということでしょうか。
自分の立ち位置は変わらないので直感的には仕組みがわかりにくく感じてしまいます。
歪みなく撮るには、家に対してカメラ/レンズを平行に保ったまま
レンズだけを上にシフトします。
こうすることで歪みを防いだまま上の2階部分まで写るようになります。
そのためにより広いイメージサークル確保のためのレンズ設計と
レンズがシフトする構造が必要になってきます。
下の写真ではレンズを上側にシフトしており、
マウント部からずれているのがわかると思います
(10と表示されていることでも確認できます)。
シフトは0から11まで可変で、単位はミリメートルだと思います。
上方向だけでなく上下左右自由にシフト可能。
(家の2階から向かいの家を撮ることを考えると下にシフトする必要があります)
絞りは不思議な仕組みになっています。
写真上部で8にセットしてあるのが実際の絞り。
3.5にセットしてあるのは実絞りから開放まで一時的に開けられるリングです。
このレンズは絞りもマニュアルですので、絞るとファインダは暗くなってしまいます。
一時的に開放にして見やすい状態でフレーミングした後
クリックの無いリングで衝撃を与えることなく実絞りに戻すためのものと思われます。
最後にカラーフィルターをかましてホワイトバランスを調整することができるようです。
実際撮影してみると確かに歪みは補正されました。
あまり極端にシフトすると十分な光量が得られないことがあるようです。
やや周辺が甘くなる傾向もありますね。
このレンズだけは撮影のためというよりも
純粋にレンズの構造に対する興味で手を出してしまったんです。
入手直後はその独特な仕組みに感動しながら建築物の間を散歩しまくりました。
さていきなりですが、このレンズは稼働率が低いため売却を検討しております(笑)。
思い出のためにここに記録を残したという次第です。
なんといいますか、こういうレンズは人類の資産のような気がしています。
(おおげさ? 笑)
その重厚なつくり、
多くは売れなさそうな特殊レンズでもラインアップしようというメーカーの心意気、
今後ペンタックスではもう設計されないであろうレンズだけに
希少価値はどんどん高まって行くんじゃないでしょうか。
まあ売ろうとしている人間の言うことじゃないですけどもね(笑)。
そのうち気が向いたら作例を載せるかもしれません。